本記事は、ワインショップSpassがお届けするドイツワイン連載の初回です。
初回となる今回は、ドイツ辛口ワインの最高峰として知られる グローセス・ゲヴェクス(Grosses Gewächs/略称GG) に焦点をあて、その格と味わいを紐解きます。
「ドイツワイン=甘口」という印象をお持ちの方も多いかもしれません。
しかし近年、世界のワイン愛好家の間では、GGが象徴する“辛口の頂点”が注目を集めています。
GGは、産地・畑・造り手のすべてにおいて極めて厳格な基準を満たした、ドイツワインの真髄とも呼べる存在です。
1. GG(グローセス・ゲヴェクス)とは?
GGは、ドイツの名門生産者組織 VDP(Verband Deutscher Prädikatsweingüter) が定める格付けの最上位カテゴリーです。
フランスの「グラン・クリュ」に相当する特級畑 Grosse Lage(グローセ・ラーゲ) のブドウから、 辛口(trocken)スタイルで造られたワインだけが“GG”を名乗ることができます。
GGの主な条件
- 特級畑(Grosse Lage)産ブドウのみ使用
- 低収量・手摘み・完熟果のみ
- 残糖9 g/L以下の辛口仕上げ
- VDP委員会の厳格なテイスティング審査を通過
このように、GGはドイツワインの中でもわずか数%しか該当しない、希少な辛口カテゴリーです。
その品質は国際的にも高く評価され、「ドイツのグラン・クリュ」と称されています。
2. GGの味わい ― 辛口リースリングの真髄
GGワインの多くはリースリングで造られ、
透明感のある酸・ミネラル感・余韻の長さが印象的です。
- 若いヴィンテージ:柑橘や白い花の香り、ライムのような爽快な酸。
- 熟成を経たGG:酸が柔らかくなり、蜂蜜やハーブ、カリンを思わせる複雑さが現れます。
オークの使用は控えめで、果実や土壌の個性が前面に出るのが特徴。
「リースリング=甘口」という概念を覆す、研ぎ澄まされた辛口の世界がここにあります。
3. スパッシュ取扱GG銘柄の一例
| 銘柄 | 産地 | 特徴 |
|---|---|---|
| バッサーマン・ヨルダン カルクオーフェン GG 2020 | ファルツ(Pfalz) | 石灰質土壌由来の伸びやかなミネラル。構造が緻密で、GGらしい高い完成度。 |
| バッサーマン・ヨルダン ペッフシュテイン GG 2020 | ファルツ(Pfalz) | 火山性土壌が生む重厚なミネラルと奥行き。長期熟成型でテロワールが明確に表れる一本。 |
| ビシェル フンデルトグルデン GG 2020 | ラインヘッセン(Rheinhessen) | 華やかさ・透明感・辛口のキレを併せ持つバランスの良いGG。別生産者のGGとして比較軸に最適。 |
いずれもVDP加盟生産者による限定生産品で、
その畑の個性がワインの味わいに精妙に反映されています。
4. GGを選ぶときのポイント
-
ラベルの「GG」表記を確認
VDPロゴとGGマークが品質の証。 -
畑名をチェック
例:「Pechstein」「Höllenpfad」など、畑ごとに異なる個性。 -
造り手とヴィンテージを意識
年ごとの気候差が味わいに大きく影響します。
5. まとめ ― テロワールを映す究極の辛口
GG(グローセス・ゲヴェクス)は、ドイツワインの中でもテロワールを最も純粋に映す辛口の頂点。
厳選された畑、造り手の精緻な手仕事、そして大地の個性が一体となったこのワインは、
静けさの中に深い力強さを感じさせます。
ワインショップSpassが厳選するGG銘柄を通して、
“辛口リースリング”が持つ奥深い表現世界を、ぜひ一度味わってみてください。
次回は、
「秋の夜長に寄り添うドイツ白ワイン5選 ― 熟成感とミネラルが織りなす上品な一杯」
をお届けします。秋の味覚とともに楽しむ、食中向けのドイツ白ワインを厳選してご紹介します。